毎年8月16日の夜に行われる、京都の「五山送り火」。お盆の精霊(ご先祖様の魂)をあの世に送り帰すための伝統的な仏教行事です。その起源は諸説ありますが、室町時代以降に、お盆に迎えた精霊を送り出す「送り火」が庶民に浸透し、山に火を焚いて精霊を見送る風習が大規模になったものと考えられています。
キモノレンタルとオムスビのお店 WA・KKAでは、それぞれの文字・形の由来と、点火時間をまとめました。
五つの文字と形の場所・点火時間・由来
炎で描かれる文字・形は「大」「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居形」の5つがあります。それぞれの場所と点火時間、それぞれの文字・形の由来や担う役割を解説します。
大文字(だいもんじ)
• 場所: 東山如意ヶ嶽(大文字山)
• 点火時刻: 20:00
• 由来・役割: 最も有名で、五山送り火の象徴とも言えるものです。この「大」の字の由来は諸説あり、弘法大師空海が始めたという説や、室町幕府8代将軍足利義政が子の冥福を祈って定めたという説などがあります。一般的には「大」の字は、宇宙の広がりや、仏教における偉大な存在を表すとされます。また、魔除けの象徴である「五芒星」の意味があるという説もあります。お盆で戻ってきた精霊を大きな慈悲の光で迎え、再び冥府へ送り届ける役割を担っています。
妙・法(みょうほう)
• 場所: 松ヶ崎西山(妙)、松ヶ崎東山(法)
• 点火時刻: 20:10
• 由来・役割: 「妙」「法」の二文字で一対とされます。これは日蓮宗の題目である「南無妙法蓮華経」に由来すると言われています。この二文字は、仏の教えや真理を表し、精霊が迷うことなく浄土へ帰れるよう導く役割があるとされます。
船形(ふながた)
• 場所: 西賀茂船山
• 点火時刻: 20:15
• 由来・役割: 西賀茂西方寺開祖の慈覚大師円仁が、唐からの帰路に暴風雨に遭い「南無阿弥陀仏」を唱えて無事帰国できたことから、その船をかたどって送り火を始めたと伝えられています。舳先(へさき)が西方浄土を向いているとされ、精霊を西方浄土へと送り届ける船の役割を担っています。
左大文字(ひだりだいもんじ)
• 場所: 大北山
• 点火時刻: 20:15
• 由来・役割: 東山の大文字と区別するために「左大文字」と呼ばれます。大文字と同様に、その由来は諸説ありますが、宇宙の広がりや、仏教における偉大な存在を象徴するとされます。後から設けられたという説もあり、大文字と並んで精霊を送る重要な役割を担います。
鳥居形(とりいがた)
• 場所: 嵯峨鳥居本曼荼羅山(仙翁寺山)
• 点火時刻: 20:20
• 由来・役割: 仏教的な要素を持つ他の送り火と異なり、これは神道における鳥居の形をしています。愛宕神社の鳥居を象徴しており、かつての神仏習合の名残とも言われます。この鳥居は、精霊が元の世界へ無事に帰るための門のような役割を果たすとされています。
炎が描く世界を浴衣で
五山送り火は、京都の人々がお盆に迎えたご先祖様の精霊を供養し、無事にあの世へ送り帰すという信仰に基づいた厳粛な行事です。消し炭は、無病息災や魔除けのご利益があるとされ、翌朝には多くの人が山に登って持ち帰ります。
ぜひ、炎が描く世界を浴衣で観にいってください。
Photo:京都フリー写真素材<>/p